
十五夜
暑かった夏も過ぎて、夜には虫の音が聞こえるなど「秋の夜長」を感じはじめる季節になりました。秋の夜長を明るく照らしてくれる「月」の存在は、昔から私たち人間にとっても貴重な存在です。そして、とくに月の輝きが強くなり、一年でも最も美しい姿をみせてくれるのが「十五夜」です。
でも、一体「十五夜」にはどんな意味があるのでしょうか?また、満月と人間の身体には不思議なつながりがあり、知らず知らずのうちに影響を受けています。今回は十五夜の由来から、満月と身体の関係、さらに十五夜の過ごし方について探っていきましょう。
十五夜の由来とは?
「十五夜」は「中秋の名月」とも呼ばれますが、この定義は太陰太陽暦にあります。いわゆる旧暦です。「十五夜」とは旧暦で8月15日の夜に見える月のことを指します。毎年日付が変わり、今年2021年は9月21日が「十五夜」「中秋の名月」となります。
この「十五夜」を愛でる習慣は平安時代に中国から伝わったといわれています。また、農業との関わりも深く、「芋名月」と呼ばれることもあるのだそうです。収穫の秋を迎えるにあたり、豊かな実りの象徴である十五夜を鑑賞し、お団子などの御供物を捧げるようになりました。
十五夜は必ず満月ではない?
なお、さらに詳しくお話すれば「十五夜」は満月であると思われがちですが、必ず満月とは限りません。旧暦は月の満ち欠けをもとにした暦で、新月の日を毎月1日と数え、15日目に満月になると考えられていました。しかし、実際に天文学的には新月から満月になるまではぴったり15日ではなく、およそ14.8日。毎年必ず「十五夜」にきれいな満月が見えるというわけではないのです。
月とからだの不思議なつながり
月と人間は農業や祈りなど、生活や精神的な面だけではなく肉体的にも関係があります。古くから満月の日には出産が多い、生理周期と月のサイクルが一致しやすいなど、とくに女性の体と月は不思議なつながりがあるとされています。
月には「満ち欠け」があることは皆さんご存知かと思います。実はこの月の満ち欠けとともに、人間の身体にも陰陽の力がはたらきます。例えば、満月の日は満ちる力である「陰」の力が最大に、新月の日は逆に排出する力である「陽」の力が最大になります。
満月の日は栄養を吸収しやすく、興奮ぎみになりやすい。逆に新月の日はデトックスしやすく、気持ちも静かになりやすいなど、私たちの身体も月の満ち欠けとともにリズムがあるのです。
「ムーンデイ」って?
ヨガの中で「ムーンデイ」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
実は古くからヨガの考え方に、新月の日と満月の日はヨガの練習を休みするという風習があり、この両日を「ムーンデイ」と呼びます。ヨガの流派にもよりますが、「アシュタンガヨガ」はムーンデイの習慣を大事にしているため、「ムーンデイ」には練習を行いません。
また、最近では「月ヨガ」という新しいヨガのスタイルも登場しています。月ヨガとは月の引力を利用して、身体の浄化と再生のサイクルを整えていくメソッドです。様々な方法がありますが、月のサイクルに合わせてポーズを変えるなど、月の満ち欠けを意識することで内側から身体を整える効果が期待できます。
自分を見つめる「十五夜」の過ごし方
今まであまり意識して来なかったという方も、今年は十五夜をもっと楽しんでみませんか?自宅でも十分に楽しめる「十五夜」の過ごし方をご紹介します。
秋の七草やお団子など御供物を飾る
七草というとお正月のイメージが強いですが、実は秋にも七草があります。十五夜にはススキを飾りますが、ススキも秋の七草の一つ。
ススキ(尾花)・クズ(葛花)・ナデシコ(瞿麦)・オミナエシ(姫部志)・フジバカマ(藤袴)とキキョウ(桔梗)・ハギ(萩)
他にもこれらの植物を秋の七草と呼んでいます。お正月の七草がゆのように炊いて食べることはしませんが、古くからこれらの植物を十五夜に飾る風習があります。どれも野草なので花屋で簡単に手に入りにくいかもしれませんが、ススキや桔梗は比較的入手しやすく、飾るだけで一気に雰囲気も出ておすすめです。
また、「十五夜」といえばお団子です。15個のお団子をピラミッドのように積み上げて飾ります。一番上の団子は、霊界とのかけはしになるとも言われています。何となく知っていた十五夜の風習も、一つ一つ知っていくと意味が分かって面白いですね。
月のリズム合わせて休息をとる
秋の十五夜に限らず、満月は身体がいつも以上に疲れやすい時。イライラしたり、興奮したりしやすい時期になります。ぜひ、十五夜の晩は自宅でゆっくり過ごしてみてください。
夜になれば涼しい風も感じられ、月夜に輝く満月を眺めているだけで、心が浄化されるような感覚になれるはずです。ぜひ月光浴で心身にエネルギーをチャージして、その日だけでも頑張りスイッチをオフにしてみてください。
今年の十五夜は、秋の風情を楽しもう
十五夜、中秋の名月という風習は知っていても、忙しいとつい忘れがちになってしまうもの。でも、十五夜の意味、また月と身体の関係を知るだけで、今年の十五夜が少し楽しみになったのではないでしょうか。夏から季節が移ろい、身体にも変化が起こりやすい時期だからこそ、セルフメンテナンスのきっかけにするのも良いかもしれませんね。ぜひ、9月21日の夜は空を見上げて、じっくりとお月見を楽しんでみましょう。