seesetができるまで - 対談 vo.l 2 -
seeset対談
Director 伊藤 × Designer 児玉
seesetができるまで
メーカーとして88年続く「高荘」が、ブランドコンセプトを整え、ヨガをやる人が増えた現代の波に乗り「seeset」を立ち上げる。その背景には〝生活を大事にしよう〟〝丁寧な暮らし〟というコンセプトに注目したDirector 伊藤が、女性のカラダの変化に寄り添いながら、ヨガをするときだけでなく、行くときも帰るときも着られるような服作りをしたいと考案。それを受けてDesigner 児玉がデザインと生地にこだわりカタチに。そんな今、二人のseesetに対する想いを語ってもらいました。
対談Vol.2
「スポーツに一番近い服というコンセプトでスポーツシーンとデイリーのオシャレの底上げを目指す」
児玉: 買いやすい服というのは価格でいうと安い物、になるけれど、長く愛されるかというとそれはまた違うと思うんです。だから、価格と見合うための服を作る責任を感じながら作るようにしています。
だから、ヨガウエアも安く作るのではなく、高くなる理由があって、ポリエステル素材を使ったゴリゴリのスポーツウエアみたいになるとハードルが上がるけど、本気度みたいな部分を薄めてハードルを下げればとたんに取り入れやすくなる、そういう風に価格ではない部分が重要になって愛用されるようになるプロセスね。
伊藤: スポーティなものは若い子が着るとかっこいいけれど、おばさんが着ると急にスポーツばばあになって見える(笑)。悪くないけれど、それじゃ困る人もいるよね。だから、洋服っぽく見えると入りやすいとか大事にしたいところです。ヨガを始めようと思うと、レギンス1本あってTシャツなんでもいいとか、何を選んでいいかわからない、っていう人も、やっていくうちに魅せたい!って意欲が沸いてくる。そうなると、ヨガスタジオが晴れの場になりますよね。特にコロナ禍で色々なお出かけができない分、スタジオで素敵にみせたいとか、Tシャツ脱いで派手で自分の体がキレイに見えるブラトップ一枚というスタイルが増えたと思いませんか。
児玉: そのためにこのブランドの役割があるんだと思います。お腹がおもむろに見えないようなデザインとか、着替えなくてもシャワー浴びないで帰れるような街で浮かないデザインとか、それでいいように作っています。ヨガ人口もどんどん高年齢化してくるヨガ人口も広い年齢層に全体の流れが変わってくる、だからこそあたり前のように取り入れて欲しいし、ヨガスタイルの底上げみたいなものができたらいいと思っています。
伊藤: そうですよね。
児玉: ユニクロが流行ったことで良かった点は街中に超ダサい人が減ったってところ。
おしゃれが苦手なおじさんたちも、小綺麗になったと思うんだよね。それと同じようなことをある意味ランクの高いところでやりたいと思っています。家の近所でランしている人が多いのですが、割と年齢層も高めで、ファッション目線でチェックしてみると、汗だくで脇汗とかが目に付くと、いくらスポーツといえども美しくないと感じてしまいます。鍛えることが目的なら、見てくれは後まわしでいいかもしれないけれど、でも、女性はもう少し外の目をきにできるようなものがいいのではと……
それをどうにかしたいなって思ってseesetを作っているところがあります。
伊藤: 私もね、寝起きで犬の散歩のときとかseeset愛用しているんだけど、ちょっとサマに見えるんですよね。汗引きも早いから実用的だし。だから、そのまま朝ごはん作ったりお弁当作ったりできて快適!それっぽく見える仕様のもの、一番の違いはそこ。スポーツに一番近い服っていうコンセプトなのはまさにそういうことですよね。
児玉: ターゲットは3、4、50代向けに作っているけれど、もちろん若い人もキレイに見えるのは間違いなし。だけど、年齢を重ねれば、肌がくすむから、そこに対しての浮かないカラーパレットを意識しています。肌映りを考えているからこそ、真っ黒が少ないのはそのせいですね。肌が負けるから、そこは深いネイビーのほうが肌映りがいいとか考えているし、グレーの色出しもチャコールグレーとかね。青み、赤みのバランスをうまく考えながら、晴れの場っていうところでは映える色柄も交えて考えています。
日常服だから、スポーツに一番近い服だけれど、スポーツウエアではないっていうところに落とし込んでいるし、本気のタイプはスポーツブランドに任せて、日常使いで動ける環境を手に入れられる服、空き時間でカラダが動かせるってことを忘れないようにしてデザインしています。
「エリアもシーンも実はボーダーレス、けれど動きやすさにおいて意味のあるデザインが隠されたポジティブな服がseeset」
児玉: 日常使い、というライフスタイルイメージして作っているけど、地域性は今のところ全然意識していないんですよね。防寒が必要なエリアまでは対応できていないが、室内なら北海道の人だって着てもらえるし、都会も地方もなく、デザインとして過度なものを減らしてどんな場でも浮かないようにしているし、意味のあるデザインを入れています。
今でいうと、袖ボリューム系だとエリア的に浮くことも想定されるけど、トレンドとして膨らみはあったほうがいい場合は、必要に入れつつも、いい具合にして、色は抑えめとかにすれば着やすいですよね。
伊藤: 東京で半袖でも、高原だとちょっと涼しいところでは長袖とかそれぐらいの感じで着分けられるし、全天候型で作っているから、ワッフルタイプのものは夏も着られますよね。朝晩涼しくて、昼間は暑いけれど温度調整できる服だからずっと着ていられるってすごく重宝するはず。ゲリラ豪雨でもすぐ乾くし、都会で普段着として着ていて雨スカートやパンツの裾が濡れてもすぐ乾く。さらには、移住したりして畑仕事始めました!みたいな人も最近は増えたけど、そういう人にはぜひ着てもらいたいと思います。洗えばすぐ乾くから日に何度でも洗えるので。
児玉: 繰り返しになるけれど、一番いいたいところは、〝スポーツに一番近い服〟というところ。ここを一番心掛けていて、スポーツウエアじゃない普段着じゃない、間をうまく取っていきたいし、本来のサスティナブルの意味を理解して、人にも環境にも優しくいきたい、要は再生と循環というところですね。
伊藤: 今は洋服の買い方も作り方も変わってきているから……その根底にある生活に寄り添ったカタチとか色とか表面に見えるところだけじゃない部分でいうと、〝機能〟、これに関してはすごい自信がありますよね。だからこそ疲れない服に辿り着いていると思います。
児玉: これからseesetはどんどん進化していくものだと思っているし、今はその戸口に立ったばかりだと思う。これから先の世の中は、ライフスタイルがもっとはっきりしてくる
と予想しています。どういうことかというと、かっこいいものはひとにぎりだろうけど、無理のない範囲でいろいろなライフスタイルができてくるはずで、お金ない人、お金ある人色々あるなかで絶対にウエルネスは消えないということね。様々な人にどう寄り添っていくかを提案しはじめたところだと思うんですよね。時代や人に合わせて動きのあるブランドになるという期待があります。
伊藤: 同じくです。
児玉: 自分の体が動く以上は続けたいブランドとして、ライフワークにしていく覚悟があるし、今は49歳だけれど55歳になったとき、60歳になったときに感じるseesetは変わるだろうから進化を見続けたいブランドなんだよね。どう進化させていくか自分のライフスタイルを含めてもう少し余裕を持ってやっていきたいと思っています。カッコよく言うと『余裕を持って、ダラダラと(笑)』。あのとき頑張ったよねって話ながら、ずっとseesetを着続けていきたいですね。
伊藤: 年齢によって必要なものが変わるじゃない、栄養素もそうだし、コスメもそうだし
服屋としては人に寄り添う、そこを大事にしていきたいですよね。Seesetは色々なスタイルの人が着やすい、いい塩梅の服になったと思う。体の線を拾うか拾わないかは、安い服だと限界があるし、これでいいやと妥協して買った服には、それ以上はないからね。seesetは、その真逆でポジティブな服ってことをわかってもらえて愛してもらえたら嬉しいです。
児玉: デザインナーとしては、これからもとにかくなんでもやっていきたいと思っています。かじることって大事で、色々好奇心でかじりまくらないと見えないこともあると思うし、そこからどれだけ拾えるかでブランドが変わると思えるからね。
今後も挑戦していきたいのは、自分のリアルライフに対して、気負わず楽しめる服作り。
いらないものは削ぐってことだから、台所に立つのに邪魔くさい物は入れないように作っていきたい。丁寧な暮らし、はseesetが一番表現したいところで、魅せたいのと丁寧さはベクトルが別だけど、自分の体に向き合っていきたいと思う人は、一度ココにきて欲しいですね。
ライター:高橋 奈央